マンションを取巻く環境を考える(その1)
- 茂 中井
- 2017年8月26日
- 読了時間: 4分
分譲マンションを取巻く環境で今後、問題となってくるのは、人の老いと建物の老いの2つです。
35歳で新築分譲マンションを購入した人は、30年後に65歳となり現役世代から年金世代に変わります。さらに、60年後には95歳です。
一方、新築分譲マンションも30年後には「高経年マンション」といわれる状態になります。60年後は築60年を経過し、税法上の耐用年数をオーバーします。
人の老いに伴うリスクは、区分所有者の高齢化による管理組合活動への不参加に加え、少子化・人口減、住宅過多による空き家化が進むことで、管理組合の機能不全が起こることです。
もう一つの老いである、建物の老いに伴うリスクは、物理的劣化・機能的劣化・社会的劣化に対応する大規模改修工事への合意形成が出来にくくなることです。
この2つの老いのリスクに対して何らかの対策を取らないと、マンションの資産価値が低下し、「売るにも売れない、貸すにも貸せない」という状況となります。
人の老いを止める手立てはありませんので、高齢者ばかりのマンションを若返らせるには、若い世帯に入居してもらえるようにすることです。
新築マンションに比べ、中古マンションは比較的安価なので若い世帯でも購入できます。購入した中古マンションをリノベーションすると新築と変わらないものになります。
しかし、30年以上経過している高経年マンションでは長期の住宅ローンやリフォームローンは組めません。これは、ローン期間は法定耐用年数を基準にしているからです。
マンションはRC(鉄筋コンクリート)造りであり法的な耐用年数は47年ですが、適切に管理や補修をすれば理論的には60年程度の寿命があり、最長では100年はもつとも言われています。
マンションの老いを止める手立ては、「建替え」ですが、住民の合意構成に手間取るケースも多く、うまくいっているマンションはまだ数少ない状況にあります。
また、私の事務所がある京都市では、景観条例による容積条件が厳しく、多くのマンションが「建替え」すると今の規模より減床してしまいます。
そこで、物理的劣化・機能的劣化・社会的劣化に対応する大規模改修工事を適切に行うことで建物を長く持たせる必要があります。
そのためには、きちんとした「長期修繕計画」を作成し、適切な時期に、適切な内容で、適切な工事費で、適切な施工・監理のもとで、工事を行う必要があります。
その中で適切な工事費でいえば、大規模修繕工事の見積金額は、新築に比べて根拠が曖昧なものが多くあるように思われます。
また、管理組合のみならず、大規模修繕工事コンサルタント(一級建築士やマンション管理士等)でも見積りに対する知識が乏しく、施工業者の言いなりになっているケースもあります。
勿論、施工業者も見積りはしていますが、下請業者の見積金額をそのまま使っているようなところもあります。そこで、正確な見積りが分かる仕組みも必要となります。
若い世帯がリノベーションするにしても、高齢者が使いやすい住環境にリフォームするにしても、マンション本体がリノベーションやリフォームにマッチした設備・環境になっていないと意味がありません。
マンション本体の改修と専有部分(住居部分)の改修が相まって行われないとマンションの資産価値は上がりません。
専有部分をバリアフリーに改修しても、マンションの玄関はバリアフリーになっていない、逆にマンションはバリアフリーになったが、専有部分は手付かずということではダメですが、現実はそのようなマンションが多くあります。
物理的劣化・機能的劣化・社会的劣化に対応する改修は、マンション本体だけでなく、専有部分でも必要です。そのため、専有部分の改修が進んでいないマンションは、いくらマンション本体の改修が適切になされていても、その資産価値は低下しますし、購入希望者は現れません。
購入希望者が現れないと、空き家化が進み、スラム化する恐れがあります。
マンション本体(共用部分)と居住空間(専有部分)を一体として、マンション全体の資産価値をあげていく努力が必要となります。
このことを管理組合、居住者(区分所有者)、行政、金融機関に周知していく必要があると思います。(続く)
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